『会津』(もう一度、カウンターの中のおばさんが見たい)

昨今、熱い人といえば松岡修造くらいしか思い浮かばなくなってしまったが
ひさびさに熱い気持ちにさせられたことがあった。
友人Fとは、原宿の文具屋で偶然出会ってから、20年来の縁で繋がっている。
東京に行くときはいつも寄せてもらっているんだけど、
ある晩、彼女に一件の飲み屋さんに連れて行かれた。
渋谷にあるのんべい横町にある店、「会津」。
わずか2坪くらいのこじんまりしたカウンターだけの居酒屋。
「おばさん」と呼ばれ親しまれている店主は45年間、一人店を切り盛りしてきた。
おばさんももう89歳だそうだ。ミラコー!!
私も何度か行ったことがあって,
文字通り会津出身のおばさんの、生真面目でナイーブ、そのくせ大胆キュートなツンデレキャラに、心をわしづかみにされてしまった〜。
からむ客や愚痴っぽい客には「もう、帰っとくれ!」と、おばさんの容赦なき追い出し攻撃というお仕置きが待っている。
赤いセーターの下から腹巻きをクロスさせた自家製のブラをチラ見せして、
「これ、おっぱいが上にあるように見えんのよ」とウインクのあと豪快な笑い(汗)
そんなおばさんと彼女は、長年のつき合いを経て客と店主の関係を越えて、家族の風景化した。
私には2人の行動パターンがあまりにも似てて驚いたというか、こんな人が世の中に2人もいるのか、、と倒れそうになった。
しかし、今年に入って、「会津」は閉店の危機に追いやられている。
おばさんの体調が思わしくなくなってきたからだ。
ある日上京したら、店のカウンターにはおばさんはおらず、彼女が立っているではないか!
聞くとFの相棒と2人で交代で店に出ているそうなんだって。ええ〜〜!!?
もっと驚かされたのは、泊まらせてもらった翌朝、彼女のキッチンから料理の!?匂いが!?幻臭!?
料理もほとんど作ったの見たことない(てか、作る気ない)彼女が、里芋のにっころがしを作っている。それは叶恭子がわらじを履くレベルほどにありえないことだった。。。(死んでもあり得ないわけじゃないってゆう、、)
「今日は、店番の日なのよ」
忙しそうにタッパーに盛りつける後ろ姿を見ながら、女だったのかオメー・・・と目頭が熱くなった。。
彼女は自分の会社も経営してるので、業務との兼業はけして楽ではないはずだ。
その間をぬって、おばさんのいる老人ホームに通い、おばさんとの親族と連絡取り合って信頼を得ていた。(おばさんにはお子さんはいません)
おばさんには、留守の間、自分たちがおばさんの城を責任持って守るからねと約束。
おばさんも家族以上に信用している彼女達に、すべてを任せた。
旦那に先立たれ、女手一つで作り上げてきた城だ、信頼以上の信頼がなければ任せる気にはならないだろうなと想像をする。
彼女と相棒の彼は、おばさんをもう一度ここに立たせると決意した!!
「もう一度、カウンターの中のおばさんが見たい」
“もう一度、カウンターの中のおばさんが見たいプロジェクト”はこうして始まった。
カウンターにすわって彼女を眺めているとおばさんとダブって見える。
楽しげに笑ってる顔を見て、なかなかサマになってきたな、、と思う。
イイ笑顔だな〜って思う。
あんまり美味しくない芋の煮物を食べながら、
どうしようもなく胸が熱いのは、お酒のせいだけではないなと思っていた。
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“もう一度、カウンターの中のおばさんが見たいプロジェクト”は
現在も進行中です。
渋谷に行った際は立ちよってみてね!
渋谷のんべえ横町 『会津』