トラウマな夏 (下)

前回の続き。。。
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ひいおばあちゃんの
「うちに帰って、お母さんに毒を吸い出してもら・・・」
最後の言葉が終わらないうちに、女の子は、妹の手をとって
モーレツなスピードで駆け出しました。
ただただ、「死ぬな、死ぬなしぬなしぬなしぬなしぬなしぬなしぬなし!!!!」
刺されてもいない、自分の肩が痛みます。
家に着いて、ぐったりした妹の肩から、おかあちゃんは何度も何度も
毒を吸っては吐き、吸っては吐き、しました。
涙でかすんだ目で、こわごわと見ていた女の子はハタと思いました。
というか、気づいたのです。
「そうか、毒を吐き出せば死ななかったのか。。!?」
なんだか、ひどい疲労感と安堵感におそわれたのでございます。
静かな中の間に寝かされた妹の横には、お母ちゃんが添い寝しておりました。
「このまま、妹は死んでしまうのだろうか。。」
お母ちゃんのそばに守られた妹が、かわいそうな、うらやましいような、、
孤独と不安につつまれながら
女の子は、柱の陰からじっと妹を見つめ続けました。。
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うーん、このせつないような、昭和な思い出を単に切り取ったような、
つげ義春的な漫画にしたら、けっこう深イイ感じになるかも。。
(ならないか、)という、この話は、私の姉と私のリアル昔ばなしです。
ということは、妹(私)は生きている、、ので安心を!
先日、里帰りで久々に姉と会い、
子供の頃のはなしを、自分たちの子供たちに聞かせてた時に、
姉が、思い出しながら話してくれたものが、この話なんだ。
姉は、この「妹の毒を吸い出せなかった自分」問題について、けっこう
しばらくトラウマになっていたという。。!
今なら、笑い話で済ませられるが、当時の小さな女の子の心には
大きな大きな“事件”だったんだろうな〜
かわいそ〜に。。
この話を聞きながら、私は“小さな妹「まこ」”に戻っていた。
当時、私は、姉を信頼しきっていて、とにかく毎日後をくっついて
あるいていた。
岡山のピクミンといわれるほど、それはそれは、すばらしいくっつきぶりだったと自分でも自負している。
今、小さな妹「まこピクミン」は、おばさんになった。
そして姉は、昨年初めから、生死を分ける大きな病気を宣告された。
長い闘病生活で、髪の毛も全部抜け、地獄のような治療の日々を一人で耐えた。
今年の夏、笑ってこんな話ができるなんて夢のようだと思う。
今にして、子供の頃の、ひたむきな姉の気持ちと、回復した喜びが重なって
なんだか熱いものが胸の奥から込み上げてくるのであった。
話がオモシロイから笑いすぎて、涙でちゃった。。みたいなセイにしてたけど。。
そんなこんなで、なんだかこのスズメバチの話は、私にとって
2重に忘れられない夏の思い出になったのでした。